ミトコンドリアは好気的エネルギー産生を行う重要な細胞内器官であるが、独自の遺伝子および発現系を持ち寄生生物起源と考えられている。ミトコンドリアとその他の細胞内器官とは密接に連携しているが一方で虚血再潅流障害などにおいてその連携の破綻がより大きな障害を引き起こすことが知られている。脳・心筋組織はミトコンドリアにほぼ完全に依存したエネルギー代謝を営んでおり、低酸素状態で細胞機能を維持できる時間は非常に短い。ミトコンドリアと他の細胞内器官との連携障害がどのような過程を経て生じるかを明らかにすることは、脳・心筋虚血障害の発生機序の解明に寄与するとともに、新しい基準に基づく核医学診断の可能性をも提供すると考えられる。 研究代表者は、ミトコンドリアエネルギー代謝の入り口となる、糖代謝・脂肪酸代謝診断薬剤、さらにエネルギー産生の本体であるミトコンドリア電子伝達系機能診断薬剤の開発を行い、さらに、低酸素組織におけるミトコンドリア電子伝達異常を検出する低酸素イメージング薬剤へと研究の展開を行った。さらに、これらの薬剤の特性を疾患モデルないし臨床例でより詳細に検討し、その有用性を明らかにした。 また、派生研究として、腫瘍化にともなって低酸素に対する反応性が異なることが明らかとなり、腫瘍の低酸素診断の意義についても検討を展開した。さらに低酸素環境における腫瘍の放射線抵抗性の獲得に関連して低酸素腫瘍選択的な内用放射線療法の可能性についても検討を行うことができた。
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