本科学研究費補助金で購入した、LINUX上で稼働するコンピュータを用いた画像解析を、本年度はさらに進めた。現在のところ得られている具体的な成果を以下に挙げる。1)小児白血病患者において、メトトレキセートを用いた化学療法による白質脳症が問題となることがある。化学療法前後で磁化移動画像(magnetization transfer image)を撮像し、得られた磁化移動画像の脳実質部分を、3DVIEWNIXソフトウェア及びfuzzy connectednewwという理論を用いて脳実質のみを自動抽出し、抽出された脳実質全体の磁化移動比ヒストグラムを作成した。磁化移動比ヒストグラムのピークは正常脳実質の量に比例することがすでに多発性硬化症をもちいた研究で確認されているが、メトトレキセートの投与によってもヒストグラムピークが減少しうることを確認した。これはおそらく顕微鏡的な脱髄を反映していると考えられるが、顕微鏡的な脱髄を早期に発見することは、不可逆性の白質脳症(disseminated necrotising leukoencephalopathy)の予防に有用であると考えられる。2)免疫抑制剤であるtacrolims(FK506)によって引き起こされた脳症の病変部の拡散係数をコンピュータ上で測定した。拡散係数が正常脳実質と比べて著明に低下している病変は非可逆であり、拡散係数が脳実質とほぼ同じか上昇している病変は可逆的であることを見いだした。3)頭頚部腫瘍の拡散係数をコンピュータ上で測定した。悪性腫瘍の拡散係数は、良性腫瘍の拡散係数より有意に低値を示し、拡散係数の測定が腫瘍の良悪性の鑑別に有用であることが判明した。
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