脳MRIのコンピュータ解析を各疾患の症例数および疾患の種類を増やし検討した。具体的な成果を以下に示す。1)免疫抑制剤tacrolimが投与された206人の患者のうち、神経症状を呈した14人の患者に拡散強調画像を含むMRIを施行した。病変の拡散係数が低下していなかった患者は、その後の経過観察において病変は消失していた。病変の拡散係数が低下していた患者はその後の経過観察で病変がさらに進行し皮質の層状壊死に陥っていた。拡散係数をコンピュータで計測することは予後の判定に有用であることが判明した。2)脳海綿状血管腫の患者において、conventional spin-echo法、fast spin-echo法、gradient-echo法によるMRIを撮像し、海綿状血管腫周囲のヘモジデリン沈着部位および淡蒼球・被殻・深部白質の信号強度をコンピュータにて測定し、それらの比を計算した。その結果、ヘモジデリンの検出にはgradient-echo法、フェリチンの検出にはconventional spin-echo法が最も優れていることが示された。4)12人の女性について、分娩2週後から最長14ヶ月にわたり、約1ヶ月おきに下垂体のMRIを撮像し、下垂体がどのような経時的変化を呈するかをコンピュータによるMRI像の解析により検討した。下垂体は分娩後半年以内には比較的速やかに、その後は緩徐に、正常の大きさ・信号強度にもどることが示された。5)メトトレキセートの髄腔内投与が行われた小児白血病患者について、治療前後に磁化移動比(MTR)画像を含む脳MRIを施行した。治療による軽微な白質の変化を、深部白質のMTRの変化や全脳MTRヒストグラムの変化として捉えうることが明らかになった。6)加齢による深部白質の異常信号(leukoaraiosis)の体積測定と脳梁の信号強度・萎縮度の対比を開始した。
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