研究概要 |
病変を臓器の形態の変化のみから診断しようとする試みには限界がある.特に心肺機能を評価する上では,換気,血流といった機能的な情報を形態学的な異常,例えば肺気腫病変等と結びつけて総合的に判断することで,疾患の理解が深まり,治療の可能性が高まると考えられる.肺全体の換気に関する情報は肺機能検査により得ることができるが,肺気腫患者に対する肺気量減少療法等が行われるようになった結果,局所の換気情報の評価が重要性を増している.そこで,本研究の目的は肺の形態診断に極めて有用なコンピューター断層装置(CT装置)を用いて,形態の異常に正確に対応する局所の換気情報を得ようとするものである.本研究では,まず,肺のCT撮影を行うにあたって問題となる,呼吸運動の影響を排除するために,スパイロメーターを用いた呼吸同期により撮影を行う方法および非線形画像変形を用いたデジタル画像処理による画像間のずれの補正方法を確立した.また,キセノンガスの肺内動態はindicator dilution theoryに基づくモデルにより画素ごとに解析を行い,この結果を換気画像として出力した.本法を正常志願者と肺気腫患者の志願者において施行した結果,換気定数の平均値は肺気腫患者において有意に低下していた.肺気腫患者においては,局所の換気の低下が,換気定数の不均等な分布として認められ,CT画像における気腫性病変の分布とよく相関していた.本法で得られた換気定数と肝機能検査の間の相関をみた結果からは,本法で肺全体の機能を評価するにはシステムの改良が必要であることも明らかとなり,さらに検討を進める必要があると考えられた.
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