研究概要 |
本年度に超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引組織診を施行した症例は9例で,その内訳は粘膜下腫瘍5例,消化管外腫瘤4例であった. 本年度は,粘膜下腫瘍5例すべて(100%)において,免疫染色が可能な十分な組織検体量が得られた.平成12年度の粘膜下腫瘍の組織採取率が3/6例(50%)であったことと比較すると,組織採取率は確実に向上した.その主な原因としては,新しく開発されたバネ式の穿刺用シースを今年度より採用したことが挙げられる.これにより狙撃性が飛躍的に向上し,このような結果が得られたと考えられる.術前に行われた免疫染色により亜分類まで可能となり,その結果はsmooth muscle type:2例,neural type:2例,combined type:0例,uncommitted type:1例であった.摘出された術後標本による最終診断による亜分類と比較すると,4/5例(80%)が術前診断と一致した.1例のみが,わずかな染色の違いによりuncommitted typeが術後smooth muscle typeと診断された.以上より現在の方法で,粘膜下腫瘍の亜分類に関する術前診断はほぼ可能であることが示唆された. 粘膜下腫瘍5例の良・悪性の術後診断は,悪性(低悪性度も含め)2例,良性3例であった.術前の組織検体の核分裂像のみによる良・悪性鑑別の正診率は60%,組織診,細胞診による細胞異型も含めた場合の良・悪性鑑別の正診率は80%であった.しかし感度は50%と低く,核分裂像や細胞異型のみでは良・悪性の術前診断には限界があると考えられた. しかし本年度,本法によって確実に得られるようになった組織検体にて,粘膜下腫瘍の増殖能を示すと考えられているki67のラベリングが可能なことが証明された.したがって今後は,術前に得られたその組織検体と術後摘出標本とのki67のlabeling indexの相関を調べ,増殖能による粘膜下腫瘍の良・悪性の術前予測が可能かどうかを評価していく予定である.
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