研究概要 |
我々は放射線照射後の前立腺癌の代謝変化を観察するにあたって、2次元プロトン-MRスペクトロスコピーのパターンを(1)コリン優位パターン:>Peak level-Citrate(2.3-2.8PPm)、(2)コリン・クエン酸平衡パターン:>0.9x Peak level-Citrate、および(3)クエン酸優位パターン,<0.9x Peak level-Citrateに分類し検討してきた。それぞれの代謝パターンの意義を確立するためには、病理所見との検討は必須であり、バルーンを膨らました状態の経直腸コイル前立腺MR画像は前立腺が後部が圧排変形し、切除標本との詳細な検討を難しくしていたが、本研究で経直腸コイル前立腺MR画像と同様に変形した切除標本像をパーソナル・コンピューターにて簡便にできる処理法を開発した。これにて癌の部位に印をつけた切除標本像をパーソナル・コンピューターに取り込み、MRスペクトロスコピー時の(1H-Chemical shift imaging, CSl)7×7の49分割に対して、それぞれのMRスペクトロスコピーのパターンと病理組織像の比較を可能とした。20症例に詳細な病理組織との検討を行った結果、コリン・クエン酸平衡パターンを呈する癌は悪性度の低いものが多く、コリン優位パターンを呈する癌は悪性度の高い癌が多かった。また、悪性度の低い癌の一部は<0.9x Peak level-Citrateクエン酸優位パターンを呈するものもあった。 コリン優位パターンを呈する癌の放射線照射後の変化は約30Gyでコリン・クエン酸平衡パターンに、約70Gy照射後にはクエン酸優位パターンへの変化は癌細胞の消失、あるいは癌細胞が残存していても悪性度は低くなっていると考えられる。放射線照射後、コリン優位パターンあるいはコリン・クエン酸平衡パターンが残存することは、放射線抵抗性の癌であることが示唆される。
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