Pretargeting法による悪性腫瘍放射免疫治療に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670911
• 研究機関: 埼玉医科大学
• 研究代表者: 細野 眞 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00281303)
• 研究分担者: 高橋 健夫 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70241883)
• キーワード: 放射免疫治療 / モノクローナル抗体 / 外部放射線治療 / 温熱治療

研究概要

本年度は放射免疫治療について動物実験にて基礎的検討を行った。外部放射線照射や温熱が、放射能標識抗体の腫瘍集積性にどのような影響を与えるかを解析した。
用いたモノクローナル抗体はNCAM(神経細胞接着分子)を認識する抗体であり、I-125標識したものを使用した。腫瘍はヒト小細胞肺癌の細胞株NCI-H69である。これはNCAMを発現していることが確認されている。ヌードマウスにNCI-H69細胞を皮下移植し腫瘍が0.5g程度に達したものを用いた。
ヌードマウスに植えた腫瘍にリニアックによって外部放射線照射を加えた。照射は1回行い、線量は、4、8、16Gyであった。24時間後にI-125標識抗NCAM抗体を静脈内投与、経時的にマウスを屠殺し体内分布を調べた。いずれの線量においてもコントロール群に比べて有意な腫瘍集積の変化は認められなかった。
次にヌードマウスに植えた腫瘍に温熱を加えて、抗体の腫瘍集積性への影響を検討した。加温は摂氏42度ないし43度のウォーターバスによって1時間行い、直後にI-125標識抗NCAM抗体を静脈内投与し、24および48時間後の体内分布を調べた。結果は24時間後において43度加温群で、48時間後において42度加温群および43度加温群の両方で腫瘍集積は1.4-1.7倍に上昇した。
今回の検討では、外部照射は放射能標識抗体の腫瘍集積に有意な影響を与えなかったが、温熱は著明に腫瘍集積を増加させた。これは放射免疫治療にとってきわめて大きな意義を持つ知見である。
さらに、今後他の腫瘍や抗体で追試するとともに化学療法の影響などについても検討していく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Sakahara H, Hosono M, et al.: "Effect of circulating antigen on immunoscintigraphy of ovarian cancer patients using anti-CA125 monoclonal antibody"Jpn J Cancer Res. 87. 655-661 (1996)
• [文献書誌] Hosono M, Hosono MN, et al.: "Localization of small-cell lung cancer xenografts with I-125-, In-111-, and Re-188-somatostatin analogs"Jpn J Cancer Res. 87. 995-1000 (1996)
• [文献書誌] Hosono MN, Hosono M, et al.: "Localization of colorectal carcinoma by rhenium-188- labeled B72.3 antibody in xenografted mice"Ann Nucl Med. 12. 83-88 (1998)
• [文献書誌] Hosono M, Hosono MN, et al.: "Biodistribution and dosimetric study in medullary thyroid cancer xenograft using bispecific antibody and iodine-125-labeled bivalent hapten"J Nucl Med. 39. 1608-1613 (1998)
• [文献書誌] Hosono M, Hosono MN, et al.: "Two-step targeting and dosimetry for small-cell lung cancer xenograft with anti-NCAM/anti-histamine bispecific antibody and radioiodinated bivalent hapten"J Nucl Med. 40. 1216-1221 (1999)
• [文献書誌] 細野 眞: "モノクローナル抗体やペプチドを用いた腫瘍核医学"核医学. 35. 681-687 (1998)
• [文献書誌] 細野 眞 細野真理子: "放射線医学から画像医学へ(翻訳)"白水社. 154 (1998)