肺小細胞癌はとりわけ従来の治療に抵抗性が高いことから新しい治療法の確立が求められている。肺小細胞癌はNCAM発現率が高いことから、放射免疫治療の対象になると考えられる。今回の検討で、体内分布の結果では、"affinity enhancement system"と名付けられた2ステップ法による放射免疫ターゲッティングを用いることにより1ステップ法に比べて高い腫瘍/正常組織比が実現できた。体内分布のデータを基にした線量計算によると、線量の腫瘍/正常組織比は腫瘍/肝、腫瘍/骨髄比が1ステップ法にて4.2、2.6であるのに対して、2ステップ法にては、14.3、16.8と高い値を得ることができた。これにより、正常組織の線量を抑えながら腫瘍に高い線量を与えることができ、内放射線治療が可能であることが実証された。NCAMは正常の神経組織やNK細胞にも密度は低いが発現されており、放射免疫療法の場合これらの放射線障害が問題になりえる。本2ステップ法においては、2つのBispecific抗体と1つのbivalent haptenとが複合体を形成することによって抗原密度の高い腫瘍の放射能集積は高くなり、正常の神経組織やNK細胞のように抗原密度の低い組織においては複合体ができないため、放射能集積は低くなると考えられる。今回のデータで、肝、腎、肺などにおいて集積および吸収線量が低く抑えられたのは、NCAMの発現密度というよりも、洗い出しが速くなって非特異的集積を抑制できたという面が大きいかもしれない。いずれにしても、2ステップ法によって1ステップ法に比べて高い腫瘍/正常組織コントラストを得られることが明らかとなった。 本研究においてNCAM発現腫瘍においてもこれまで報告のあったCEA発現腫瘍と同様に内部放射線治療が可能な高い腫瘍/正常組織比を達成できることが示された。
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