研究概要 |
癌治療において最も困難な問題が転移である。放射線療法、温熱療法は癌の局所療法として重要な地位を占めており、両療法による癌転移への影響は興味ある課題であると共に臨床的にも明らかにしなければならい問題である。そこで、ヒトの高転移性癌細胞を使用して、放射線、温熱療法の癌転移に及ぼす影響を細胞線溶の立場から検討した。 1)高転移性ヒト由来癌細胞でのin vitro実験 ヒト肺癌由来AOI腫瘍細胞、ヒト神経膠芽腫由来U87MG腫瘍細胞、ヒト骨肉腫由来OST腫瘍細胞を、シャーレに播種し、対数増殖期に60Coγ-線を0,5,10,20,30Gy照射、または37,40,43,45℃で1時間加温し、経時的に細胞数を測定した。また、培養液中に腫瘍細胞が産生した細胞専用因子(tPA,uPA,PAI-1)をELISA法で測した。 2)ヒト眼細胞移植ヌードマウスの転移によるin vivo実験 各ヒト腫瘍細胞をKSNヌードマウス下肢に移植し、腫瘍径が8mmになった時点で照射または温熱療法を実施し、経時的に腫瘍径を測定した。また移植60日、120日後にマウスを解剖し、転移を計測した。 その結果、AOI,OST細胞は照射で細胞線溶が増加し、温熱では低下又は同じであった。ヌードマウス移植実験でも照射後転移が促進された。U87MG細胞は照射で細胞線溶は低下し、温熱で増加し、ヌードマウス実験でも温熱後転移が促進された。 以上の結果より、腫瘍細胞により、照射または温熱療法により転移が促進される可能性が明らかとなった。とくに、ヌードマウスでのin vivoの結果はin vitro細胞線溶の結果を反映することより、放射線照射および温熱療法後の腫瘍の細胞線溶は転移の有効な指標になると思われた。
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