研究概要 |
放射線療法、温熱療法はQOLを考えた機能温存の癌の局所療法である。よって、これらの治療後に転移、再発が起こるか否かは興味ある重要な問題である。また、放射線療法、温熱療法において、周辺正常組織への照射、加温は免れえない。1)そこで、正常細胞(ヒト繊維芽細胞:NF)及び癌細胞(ヒト繊維肉腫HT-1080腫瘍細胞:HT-1080)を照射、加温し癌の転移・再発に関与する細胞線溶因子を検討した。また、2)予備加温により誘導されたHSP70による癌の増・転位の防御効果を検討した。 1)ヒト繊維芽細胞(NF)及その癌細胞(HT-1080)の放射線および温熱の転位・再増殖に及ぼす影響 NE,HT-1080細胞をシャーレに播種し、対数増殖期の培養3日後に60Coγ-線5,10.20,30Gyまたは40,43,45℃で1時間加温し、8日間培養し培養液の細胞線溶因子(tPA,uPA,PAI-1)から転位能を検討した。また、8日後に培養液を交換し、その後さらに4日間培養し、その培養液の細胞線溶因子を測定して再増殖能を検討した。また、この間の細胞形態を観察した。 その結果、細胞線溶に関しては(特にuPA)正常細胞のNF細胞に比べ癌細胞のHT-1080細胞の方が10〜50倍高い産生能を有し、特に放射線照射後および再増殖時に増加した。よって、放射線照射後の細胞線溶活性の増加より、転位・再発の促進の可能性が示唆された。また、照射・再増殖によって癌細胞自体の形態が変化した。これらの結果より、放射線治療後の細胞線溶因子(特にuPA)は治療効果の指標になると思われた。 2)予備加温による癌の増殖・転位の防御効果 予めマウスを40〜41℃で全身加温し、2日後エールリッヒ腹水癌を腹くうに移植し、その増殖能を非加温マウスと比較した結果、予備加温により若干の増殖抑制を認めたが、有意ではなかった。
|