生体内で生成されるフリーラジカルである活性酸素を無侵襲下で観測するため、電子スピン共鳴法(ESR法)を用いたin vivoフリーラジカル計測システムが開発され、生体内での情報を二・三次元的に視覚化するシステムの開発が行われてきた。この活性酸素に関する医療情報を臨床面で応用するには、ESR画像化法だけでは活性酸素のみが特異的に観測されるが、活性酸素が生成された組織についての情報が得られない、つまりその組織は見えない、という問題があった。 このような欠点を克服しフリーラジカルの三次元情報を画像化するために、フリーラジカルの持つ磁気緩和効果による造影効果を利用し、核磁気共鳴画像化法(MRI法)によるフリーラジカルの組織内分布を視覚化する手法の開発に着手した。 本年度はフリーラジカルとして近年着目されている一酸化窒素(NO)を取り上げ、体内で生成しているNOの視覚化をMRIで試み、以下のような結果を得た。 敗血症モデルラットの脳組織におけるNO生成の視覚化:ラットにリポポリサッカリドを投与して敗血症モデルラットを作り、ラットの脳組織で誘導されたNO合成酵素から生成されるNOを脂溶性スピントラップ剤であるdiethyl dithiocarbamate鉄錯体を用いて、安定化できるかどうかの検討を行った。その結果、この脂溶性スピントラップ剤によりNOを寿命が長く安定化できうることが分かったので、MRIでNO生成部位が観測できるかどうかの検討を行った。今回用いたMRI装置は、1.5Tから8TまでのMRI装置であるが、8Tの高磁場MRI装置を用いることにより、脳内でのNO生成部位を特定しうることを明らかにすることができた。
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