研究概要 |
覚醒剤精神病の動物モデルである行動感作モデルは覚醒剤精神病の再発脆弱性、発症過程のメカニズム解明に有用であり、ひいては、精神分裂病の病態研究にも資するところが大きい。本年度は以下の結果を得た。 1.Methamphetamine(METH)(1mg/kg)を10日間連投し、7日間の断薬後にMETH(1mg/kg)を再投与すると、METHの移所運動促進効果に対する行動感作の成立が確認された。METH(1mg/kg)投与5分前にclonazepam(0.5mg/kg)を前処置することを10日間反復した場合には、行動感作の成立が阻止された。clonazepam処置の10分前にGABA-BZP受容体アンタゴニストであるflumazenilを処置すると、上記のclonazepamの行動感作成立阻止効果は消失した。以上の結果は中枢性GABA-BZP系神経伝達を促進することで覚醒剤の行動感作形成過程が阻止されることを示唆する。 2.mGluR IIアゴニストであるLY354740は自己受容体を刺激し、glutamate放出を抑制する。METH(1mg/kg)単回投与の20分前にLY354740(20mg/kg)を処置するとMETHによる移所運動促進効果が減弱した。METH(1mg/kg)投与20分前にLY354740(20mg/kg)を処置することを10日間反復すると、METHによる移所運動促進効果に対する行動感作の成立が阻止された。 3.MS-153はglutamate遊離抑制あるいは再取込み促進能を有する。METH(1mg/kg)単回投与20分前にMS-153(25,50,or 75mg/kg)を処置するとMETHによる移所運動促進効果が減弱した。METH(2.5mg/kg)を1日おきに5回反復投与し、7日間の断薬後にMETH(1mg/kg)を再投与するとMETHによる移所運動促進効果に対する行動感作の成立が確認された。METH(2.5mg/kg)投与2時間後あるいは3時間後にMS-153(25mg/kg)を処置することを5回反復するとMETH(1mg/kg)による移所運動促進効果に対する行動感作の成立が阻止された。 以上の結果は、中枢におけるシナプス間隙でのglutamate濃度を減少させることで、覚醒剤の行動感作形成過程が阻止されることを示唆する。
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