1. 薬物治療抵抗性または不耐性のために修正型電気けいれん療法(m-ECT)を実施した難治性老年期うつ病患者11例(年齢50歳以上)のうち、m-ECT後にHamilton Rating Scale for Depression(HAM-D)の得点が60%以上(14点以下)改善しかつ2週間以上維持された治療反応例9例について、ECT前からECT後3ヶ月間の局所脳血流動態の変化を追跡した。その結果、年齢・性を一致させた対照群と比較すると、ECT前に認められたorbitofrontalpralimbic領域の血流低下パターンがECT後にも持続的に観察された。この領域の血流低下パターンは難治性老年期うつ病の素因関連性指標である可能性が推測された。 2. ECT終了後3ヶ月目の前部帯状回領域の血流と頭部X-CTの白質病変(PVL)の強度ならびにエピソードの持続期間には負の相関が認められており、薬物療法が困難な老年期うつ病の中にはVascular Depressionの一群があり、皮質下の虚血性変化が辺縁系領域の機能低下の一因となり、これが難治性老年期うつ病の素因となっている可能性が示唆された。 3.さらに9症例のうち3症例が6ヶ月以内に再燃(再燃率33%)しているが、視察的に、再燃例3例の大脳辺縁系領域の血流低下パターンは非再燃例6例に比較すると明らかに強い。このことは同領域の機能低下が難治性うつ病の再燃脆弱性と関連する可能性を示唆している。平成12年度にはさらに症例数を蓄積の上、再燃群・非再燃群間の統計学的な比較解析を行い、難治性老年期うつ病に見られる局所脳血流異常所見と頭部CT/MRI上の異常所見の病態論的・臨床的意義を明らかにするとともに、m-ECTおよびm-ECT後の継続治療の治療反応性を予測する臨床指標を検討する予定である。
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