研究概要 |
進行性核上麻痺(PSP)13例、皮質基底核変位症(CBD)3例、ピック病(PD)3例、アルツハイマー病(AD)5例で、紳経変性(神経細胞の消失、線維性グリオーシス、軸索や髄鞘の変性)の新旧ではそれぞれに特徴があり、PSPは皮質下諸核(淡蒼球、視床下核、視床下部)が最も高度で大脳皮質(中心前回、前頭前野)は軽度であり、CBDは大脳皮質(中心前回、前頭前野)は高度で皮質下諸核は軽度であり、PDでは内側後頭側頭回、下側頭回が最も高度で皮質下諸核は軽度であり、ADは海馬傍回、海馬が最も高度で皮質下諸核は軽微であった。 次にこの神経変性(特に神経細胞死)とグリア系の細胞骨格異常の関連性の検討をするためにtau、ubiquitin、MAP(microtubule-associated protein)1,2,5、PHF(paired helical filament)、GFAP(glial filament acidic protein)などの免疫染色とGallyas-Braak染色、Holzer染色を用いて比較検討した。高度な病変部位では免疫染色の動態にはそれぞれ異同がみられたが、PSP、CBDでは免疫染色は類似しており、PDではtau、ubiquitin、PHFは極めて軽微か陰性であり、ADはMAP以外はいずれも高度に染色された。軽度な病変部位ではその染色動態は全体に軽化し、グリア系の細胞骨格異常であるGCB(glial coiled bodies)、AT(argyrophilic threads)、TuSA(tuft-shaped astrocytes)の出現動態をみると、とくにPSP、CBDにおける頻度は神経細胞の消失を超えて多く出現し、PD、ADは全くみられない症例とわずかにみられる症例であり、神経変性との関与はほとんどないと判断された。 また、PSP、CBDにおける大脳皮質深層部における神経細胞の脱落は重要な所見であり、グリア系の細胞骨格異常と神経細胞死の関連をさらに検討する。
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