精神分裂病ではドーパミン神経系の伝達異常が推定されているが、分裂病様の精神症状を示す、てんかん性精神病においてドーパミン神経系の異常を調べた研究は少ない。てんかん性精神病は側頭葉にてんかん焦点を示す症例に多いことから、側頭葉一辺縁系の病態が疑われている。しかしこれまで線条体以外の側頭葉などの部位のドーパミン受容体を調べた報告はない。その理由は、従来の[11C]racloprideなどのD2受容体用PETトレーサの親和性が低く、S/N比が悪く、線条体以外を評価の対象とすることが不可能であったからである。最近、D2(およびD3)受容体に対する親和性がはるかに高いFLB457を標識した[11C]FLB457が開発された。われわれは、[11C]FLB457のPET画像に対してComputerized Brain Atlas (CBA)を用いて線条体以外のD2受容体分布を調べた。その結果、D2受容体が線条体以外の側頭葉や視床においても高い密度で分布することを明らかにした。そして、未服薬分裂病男性患者を11例と年齢が一致した健康男性18例を対象に、[11C]FLB457を用いたPET検査を行い、線状体外のD2受容体を調べた。その結果、分裂病群では対照群に比べて、前帯状回において有意なD2受容体結合能の低下を認めた。さらに、てんかん、てんかん性精神病患者を対象に、[11C]SCH23390(ドーパミンD1受容体)および[11C]FLB457(D2受容体)を用いたPET検査を行い、てんかん発作焦点とD1およびD2受容体の脳内分布の異常の関連を調べた。その結果の視察的評価では、焦点部位と受容体脳内分布の異常には明らかな関連を認めなかった。今後、より定量的な方法で三次元的に脳内分布異常を詳細に調べる必要がある。
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