精神分裂病の意味的情報処理の異常について脳磁図を用いて調べる前段階として、健常者の意味的情報処理についてさらに詳しく調べた。名詞と助詞、漢字とかなの違いについて検討するために、四つの文章のそれぞれにつき、漢字かな混じりの文章、すべてかなで表記された文章の二種類を作成し、被験者間でカウンターバランスをとって呈示した。これらの文章は単語レベルで区切られており、1.2秒間隔で一語ずつ呈示して健常被験者に黙読させながら、148チャンネルの全頭型脳磁計(BTi社)を用いて脳磁界応答を記録した。漢字名詞、かな名詞、助詞(二種類の文章)の4条件について平均加算した。どの条件でも200msec付近に脳磁界応答(M200)が認められたが、この振幅は漢字名詞、かな名詞、助詞の順に大きかった。電流源推定では、名詞が舌状回から紡錘状回に、助詞は角回から縁上回に推定されることが多かった。この結果により、名詞では腹側視覚経路(後頭葉の視覚野→側頭葉)、助詞では背側視覚経路(後頭葉の視覚野→頭頂葉)が主として関与している可能性を考えた。これらの結果の一部は臨床脳波学2000年12月号で発表し、2001年3月に行われる予定の第12回国際脳電磁図トポグラフィ会議に発表予定である。なお、前年度のM200やN400mの結果を第2回ヒト脳機能マッピング研究会学術集会、30th annual meeting of the Society for Neuroscience(2演題)、第22回事象関連電位研究会に発表した。
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