目的:本研究は、ストレスを用いて作成したうつ病モデルラットにおける視床下部-下垂体-副腎(HPA)系と青斑核(LC)ノルアドレナリン(NA)系ニューロンの機能亢進を、イミプラミンまたはコルチコトロピン放出因子(CRF)拮抗薬が抑制するか調べるために企てたものである。方法:成熟ラットを2週間、強制歩行ストレスに曝し、自発輪回し走行活動の低い、血漿ACTHおよびコルチコステロン濃度の高い動物(モデル)を作成した。うつ病モデルラットの腹腔内に20日間、自発活動量を測定しながら、イミプラミン(8mg/kg/日)または生理食塩水を注射し、最後に断頭して、血漿ACTH、コルチコステロンおよびLCのチロシン水酸化酵素(TH)mRNA発現を測定した。また、他に用意したモデルラットのLCに3日間、CRF(5μg/日)とCRF拮抗薬であるアルファヘリカル(αh)CRF(10μg/日)、アストレッシン(10μg/日)および生理食塩水を注入して、活動性、ACTH、コルチコステロンおよびTHmRNA発現を測定した。結果:1.イミプラミンの投与は自発活動を増加させたが、ACTH、コルチコステロン値およびTHmRNAの発現を低下させた。2.αhCRFとアストレッシンもACTHおよびコルチコステロンを低下させた。この処置では、自発活動とTHmRNA発現は最後の注射の翌日に測定した時、減少していたが、2週間後には増加した。3.行動その他の生物学的指標に及ぼすCRFの影響は、CRF拮抗薬を処置した結果と完全に逆転していた。これらの所見は、CRF拮抗薬と抗うつ薬がHPA機能と(しばし休養状態にある)LCニューロン内のNA合成を抑制するが、次いで合成機能の反転が起こり、結果として自発活動が増加することを示唆している。
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