研究概要 |
ニューロペプチドYは広く中枢神経系に分布し、Y1、Y2,Y5受容体を介して、様々な生理機能を有している。海馬内ではGABAと共存しY2受容体を介してグルタミン神経系に抑制性に作用することが知られている。われわれは、これまでに遺伝性てんかんモデル動物(SER、IGR)を用いて、そのけいれん準備性におけるNPYの関与について報告してきた。本研究に用いたNERは、年齢依存性に部分発作、二次性全般化発作を認め、形態学的異常が少なく、任性を有することから、従来のものより優れた動物モデルである。 二次性全般化を認めない時期では、海馬内でのNPYには変化が無く、二次性全般化発作が出現する12W以降では、NPYの免疫活性、mRNAの発現は増大する。Y2受容体は、その発現が歯状回顆粒細胞域で増強し、mossy fiberとシナプスを形成するhilusでの受容体結合部位の著明な増加を誘導している。この所見は、カイニン酸(KA)投与モデルなどと共通しており、全般発作後の代償性変化と捉えることができる。一方Y1受容体は、KAモデルとは異なり、down regulateしないことが判明した。 NERの遺伝的背景は現在のところ不明であるが、Y2受容体遺伝子解析の結果、第58番目のCがTに、第747番目のCがTにそれぞれ置換されており、受容体タンパク質のアミノ酸配列では、20番目のロイシンがフェニルアラニンに、266番目のスレオニンがメチオニンにそれぞれ置換されていることが明かとなった。この所見は、本モデルでのY2受容体機能異常さらにはやけいれん準備性と関連において、さらなる検討が必要な課題である。
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