研究概要 |
脳におけるアミロイドβ蛋白質(Aβ:amyloid β protein)の蓄積がアルツハイマー病(AD:Alzheimer's disease)の病理学的プロセス移行へのトリガーと考えられることから,Aβの代謝機構の解明は重要課題であり,その分解に関与する酵素群が次々と明らかにされつつある。一方,脳以外のAβ代謝に関しては現在ほとんど手つかずの状態である。我々はこれまでにAβC末断端を認識する抗体により肝細胞が標識されることを見出した。本研究では,肝臓含めた種々の非神経組織におけるAβの存在を確認し,そのAβの凝集性を検索した。 1.N末に坦体蛋白質であるヘモシアニンを共有結合させたAβ37-42,Aβ32-40を各々家兎ならびにマウスに免疫して,ポリおよびモノクローナル抗体を調整した。 2.上記のAβC末認識断端抗体と抗Aβ17-24抗体(4G8)を用いた免疫組織化学法によってヒト生体サンプルを検討した結果,脳,心臓,肺,肝,腎,脾,膵,小腸,皮膚にそれぞれ免疫陽性反応を認めた。 3.上記の非神経組織のAβ代謝産物の凝集性を検索するために各組織をPASおよびチオフラビンSにより染色したが,陽性反応は認められなかった。 これらの結果から,脳以外の各非神経組織にAβ代謝産物が存在することが確認された。また,脳内のAβは凝集性を呈するのに対して,非神経組織に存在するAβには凝集性が認められないことが判明した。
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