研究概要 |
アミロイドβ蛋白質(Aβ:amyloid β protein)の代謝機構を明らかにすることはアルツハイマー病(AD:Alzheimer's disease)の病因究明において重要な課題といえる。我々はこの代謝研究の糸口として,これまでにAβC末断端を認識する抗体により脳,心臓,肺,肝,腎,膵,小腸の各組織が標識されることを見出した。本研究では,さらに下記のことが明らかになった。 1.AβN末断端抗体を用いた免疫組織化学法によってヒト生体サンプル(脳,心臓,肺,肝,腎,膵,小腸)を検索した結果,腎以外の組織はAnti-N17(L)により標識され,Anti-N3(pE)では腎に加え脳,肺,肝臓,小腸に陽性反応が認められた。 2.抗Aβ17-24抗体(4G8)による免疫ブロットでは心,肝,腎に陽性バンドは認められなかった。 3.脳の大脳皮質神経細胞は抗Aβ17-24抗体(4G8)で標識されたが,Anti-N3(pE),Anti-N11(pE),Anti-N17(L)では陰性であった。 各組織で認められていたAβ陽性反応は2.の生化学的手法では確認されなかったことから,cross reactionの可能性があるが,他の抗体および他の組織による検討が必要と考えられた。神経細胞内Aβの存在はすでにAβC末断端抗体を用いた研究によって明らかになっており,我々の4G8による所見はそれを確認するものといえる。神経細胞内AβのN末については今回の検索では明らかにできず,このAβN末は(1)代謝を受けていない,(2)使用したAβN末断端抗体が認識する以外の箇所で断端になっている,などの可能性が考えられた。
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