研究課題/領域番号 |
11670953
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研究機関 | 宮崎医科大学 |
研究代表者 |
松田 一典 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (30311880)
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研究分担者 |
林 要人 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (20295223)
田代 謙一郎 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (00216954)
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キーワード | Laminin / Laminin peptide / Alzheimer's disease / Vascular dementia / ELISA / Cerebrospinal fluid / Diagnostic marker / Therapeutic agent |
研究概要 |
我々は各種ラミニンサブユニット抗体(α1、γ1、β1)、wholeラミニン抗体ならびにラミニンペプチド抗体(α1鎖のペプチドYFQRYLI)を用いた簡便なELISA法を確立し、アルツハイマー型痴呆(ATD:早発性ADと遅発性SDATを含む)とVaDを中心とする痴呆性疾患患者髄液と非痴呆疾患患者髄液のラミニン解析を行った。ラミニンγ1鎖はATD群で有意な低値を示しかつAD群においてのみ加齢に伴う急激な減少を示した。ラミニンペプチド(YFQRYLI)は正常群に比べSDAT群で有意に高値を示した。ラミニンβ1鎖とwholeラミニン-1はVaD群で有意に高値を示した。α5鎖は正常群に比べ全ての疾患群で有意に低値を示した。これらの結果は各種ラミニンサブユニット動態が疾患によって異なりラミニンが各病態に関与していることを示唆している。疾患による髄液ラミニン動態の違いを利用し、各疾患の生物学的診断マーカーへの有用性を検討した。ATD診断に「タウ濃度/wholeラミニン濃度」を指標とすると、感度85%と特異性81%を示し、ATD診断マーカーとしての有用性が示唆された。VaD診断にβ1を指標とすると感度88%を示し、β1のVaD早期診断マーカーとしての有用が示唆された。α5鎖は全疾患群で低値を示し、非特異的な脳障害の有無の判定に利用できることが示唆された。さらに、ATD群の脳でγ1鎖の産生が増加しているという報告と今回我々が得たATD群における髄液中γ1鎖の低値ならびにα1ペプタイド鎖の高値という結果はATDとSDAT脳における特定のラミニン分解(ATD群ではγ1鎖、SDAT群ではα1鎖)の亢進を示唆するものである。ラミニンならびにラミニンペプタイドがAβの凝集と細胞毒性を抑制するとの報告から、これらのラミニン分解の抑制が有効なAD治療法の開発につながる可能性も示唆された。
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