研究課題/領域番号 |
11670956
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
精神神経科学
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小澤 寛樹 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (50260766)
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研究分担者 |
齊藤 利和 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50128518)
相馬 仁 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70226702)
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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キーワード | 気分障害 / 精神分裂病 / ヒト死後脳 / G蛋白質 / 細胞膜内環境 / 2次メッセンジャー / アルツハイマー病 / 脳情報伝達系 |
研究概要 |
うつ病における共通の分子生化学的基盤として死後脳におけるアデニル酸シクラーゼ(AC)系とホスリパーゼC(PLC)系の変化を検討し、他の主要な精神疾患であるアルツハイマー病(AD)・慢性精神分裂病と比較し、情動・記憶・意欲障害(うつ症状、精神分裂病の陰性症状、アルツハイマー病)の共通性・差異の生化学的背景を明らかにすることを目的とした。うつ病患者死後脳のAC活性の基礎活性値は低下していたが,I型ACの蛋白質量増加に帰因すると推察されるCa^<2+>調節性のcAMP産生機能の亢進が認められた。さらにうつ病群においてはcAMP産生機能の低下とこれに伴い転写因子である総・リン酸化CREBの低下が認められた。ADではI型AC量低下に伴うCa^<2+>刺激性ACの減弱とリン酸化CREBのみの低下が認められた。精神分裂病においてはAC活性のEGTA存在下では基礎活性値、マンガン刺激活性は不変であったが,I型AC量増加伴うCa^<2+>刺激性ACの亢進が認められた。従ってうつ病とADに関しては一部のcAMP産生機能は低下していることが共通しているが、Ca^<2+>調節性による変化は異なっていた。一方慢性分裂病ではcAMP産生機能は増強が認められた。さらに単極性うつ病と精神分裂病群双方に共通して5HTに関連したIPsシグナルカスケードの亢進が生じていた。数種類の抗うつ薬が5HT刺激性IPsの産生をin vitroにて阻害した。これらは症候学的・薬理学的に示唆されているうつ症状と精神分裂病の陰性症状の共通性の生化学的背景を推察させる所見と考えられた。またG蛋白質の細胞膜内分布の変化について検索し、うつ病患者死後脳では対照群と比較してGsαが細胞膜の中の比較的疎水性の低い部分に多く分布し、逆に疎水性が高く界面活性剤による処理を行っても容易に膜から離れない部分に存在するGsαの量は減少しているものと考えられた。対照的に、精神分裂病群ではTX-100によって抽出されるGsαの量は対照群と比較して増加しており、Remainderの中に残存するGsαは減少していた。これらの結果は症候学的・薬理学的に示唆されている情動・記憶・意欲障害(うつ症状、精神分裂病の陰性症状、アルツハイマー病)の共通性・差異の生化学的背景を推察させる所見と考えられた
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