ペントバルビタールで深麻酔下のウィスター系ラットを、2%パラホルムアルデヒド(PFA)と2%グルタールアルデヒド(GLU)の固定液で潅流固定し、4%PFAで24時間浸漬固定をした後クリオスタットにて凍結切片を作製した。切片は0.1M燐酸緩衝液で保存し、改良BChE染色法でこれらを染色した。反応液は0.1M燐酸緩衝液(pH7.4)に硫酸銅とフェリシアン化カリウムをそれぞれ0.04mMと、0.005mMの濃度になるよう加え、基質のヨウ化ブチリルチオコリンを0.0005%の濃度に溶解して作製した。室温で2時間反応してから、引続き染色操作を行った。染色液は0.05Mトリス緩衝液(pH7.4)にジアミノベンチジンと硫酸ニッケルアンモニウムをそれぞれ0.05%、1%の濃度になるように溶解し、さらに、過酸化水素を0.0045%加えた。特異的抑制剤にはiso-OMPAを用いた。その結果、本年度の研究ではラット前頭葉の内側部と外側部にBChE陽性線維の分布を認めた。これは、従来のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)やコリンアセチル基転移酵素免疫組織化学によるコリン作動性神経線維の分布とは明らかに異なるものであった。その線維は内側前脳束から内外側に分かれて上行し基底核淡蒼球の腹側部から前頭葉にいたる経路をたどっていた。皮質下にはこれらの線維を投射すると思われるBChE陽性神経細胞集団があり、視床前核などの視床内亜核群と中脳脚橋核/背外側被蓋核の中脳コリン作動性神経細胞核群がふくめられる。これらを鑑別する方法として、次年度の研究では中脳のコリン作動性神経細胞核群を傷害した実験で行う予定である。
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