昨年度(11年度)の研究で、ヒトにおいて分裂病様の症状をを引き起こすphencyclidine(PCP)をラットに対して腹腔内投与することにより、内側前頭前皮質(mPFC)ニューロンの発火活動が長時間にわたって亢進すること、また、この発火活動の亢進がmPFC外からの興奮性入力によりひきおこされていることを明らかにした。今年度の研究においては、mPFCニューロンの自発発火活動亢進が、PCPに特異的な現象であるのかについて検討するため、PCPと同様にhyperlocomotionを引き起こすことが知られているmethamphetamine(MAP)を、ラットに腹腔内投与し、mPFCニューロンの発火活動に及ぼす効果について調べた。実験結果から、MAP投与により行動上、顕著なlocomotionの亢進が生じるが、mPFCニューロンの発火活動は、投与前と比較してほとんど変化しないことが明らかとなった。また、mPFCニューロンが認知課題場面で、どのような反応性を示すのかを検討するため、ラットに2音弁別課題を課し、課題中のニューロン活動を記録した。この結果、刺激呈示頻度が低く、かつ報酬と連合した刺激にのみ選択的に反応する、確立依存型ニューロンが多く存在することを明らかにした。 現在、我々は本研究計画で最後に残された問題、PCPによるmPFCニューロンの活動性亢進が脳内のどの部位から入力されているのかという点を明らかにするため、mPFCに興奮性投射を送っている脳内領域に、reverse dialysis法を用いてPCPを局所潅流し、mPFCニューロン活動及び行動に及ぼす効果について検討中である。
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