本年度の研究では、ミトコンドリア遺伝子異常患者のスクリーニングを行ない、新たに1家系にミトコンドリア遺伝子3243番にA→G変異があることを発見した。現在この家系について精神神経学的な調査を行なっている。患者本人は、精神神経学的に特に異常は見られないが、糖尿病が認められ、この遺伝子異常と糖尿病の関連が示唆された。この他、現在までに臨床的にミトコンドリア遺伝子異常が考えられる家系が2家系あるため、現在遺伝子解析中である。現在までに遺伝子異常が判明している家系については、精神神経学的調査を継続中である。血液生化学的検査も継続中であるが、血中乳酸、ピルビン酸の高い患者とそうでない患者がいるため、精査中である。放射線医学的な検査では、脳梗塞が多発する患者から、所見の見られない患者まで所見にばらつきが見られる。数人の患者で小脳の萎縮が見られるが、この所見がミトコンドリア遺伝子異常と関連するのか現在調査中である。今回、患者遺伝子をスクリーニング中に、ミトコンドリア遺伝子内にlarge poly-C insertionを見出した。この所見はアフリカ人にしか見られていなかったが、今回の研究で日本人にも存在する事が新たに判明した。約1.5%程度の日本人がこの所見を有しているものと思われ、遺伝子マーカーとして有用になることが考えられた。今後も、上記の検索を継続し、ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者について精神神経学的な状態像を明らかにしていきたい。
|