研究課題/領域番号 |
11670970
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
植木 昭紀 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30203425)
|
研究分担者 |
真城 英孝 兵庫医科大学, 医学部, 助手
三和 千徳 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (60309458)
|
キーワード | アルツハイマー病 / 内嗅皮質 / 海馬 / アセチルコリン / 記憶障害 / オペラント学習 / 脳内微量透析法 / 動物モデル |
研究概要 |
内嗅皮質(entorhinal cortex)は、アルツハイマー病の早期から神経病理学的変化が出現する部位であるとともに、記憶と最も関係の深い海馬と神経解剖学的に線維連絡があり、アルツハイマー病の内嗅皮質病変がアルツハイマー病の中核症状である記憶障害の一因をなしている可能性が推察されている。本研究では、両側内嗅皮質破壊ラットが正強化オペラント学習課題を遂行する間の海馬でのアセチルコリン放出および海馬アセチルコリン線維の起始核である中隔野でのドパミン放出を同時に同一個体において調べるために、それぞれの部位に透析プローベを挿入し、脳内微量透析(in vivo brain microdialysis)を行った。両側内嗅皮質破壊ラットでは正強化オペラント学習の獲得障害を認めるとともに、海馬での学習実験前のアセチルコリン基礎放出量は低く、学習実験中の放出量も低下していた。中隔野でのドパミンについては学習実験前の基礎放出量、学習実験中の放出量のどちらにも異常はなかった。両側内嗅皮質破壊ラットにおいて学習獲得障害と同時に学習実験中の海馬でのアセチルコリン放出の異常を生体下で確認できたことから、内嗅皮質の破壊が中隔野を介さず、直接、海馬の神経回路に影響し、記憶に関連するアセチルコリン系神経伝達機能を障害していると考えられた。このことはアルツハイマー病の早期において内嗅皮質に生ずる神経病理学的変化が記憶障害の原因の1つであることをあらわしており、両側内嗅皮質破壊ラットがアルツハイマー病の記憶障害モデルとなる可能性を示唆している。本研究から得られた結果は、アルツハイマー病における記憶障害の発現機序を理解するだけではなく、治療薬開発のための新しいアルツハイマー病の病態モデルを作成する上でも、大きな手掛かりを与えるものと思われる。
|