研究概要 |
Parkinson病の原因遺伝子産物である水溶性タンパクNACPは神経細胞内で凝集し"NACP線維"(Arima et al,Brain Res,1998)を形成し細胞死を引き起こす.1999年はNACPと微小管結合タウタンパクの相互作用について以下の結果を得た. (1)Parkinson病脳におけるNACPとタウの共存とその分類(Brain Res,1999) Parkinson病脳にはLewy小体のほかに神経原線維変化(NFT)と老人斑がみられる.タウの凝集線維化によるNFTの形成とNACPの線維化は相互に関連性があるとの仮説のもとに,我々はタウ抗体とNACP抗体による蛍光二重標識法により両タンパクの共存が従来の知見より高頻度にみられることを明らかにした.更に共存を4分類した.第1型,リング状のタウ免疫反応性を示すLewy小体;第2型,Lewy小体の周囲を明瞭な線維構造をもったNFTが取り巻く;第3型,NACPとタウに免疫反応性を示す線維あるいは顆粒の塊;第4型,NACPとタウに免疫反応性を示す変性神経突起.以上からNACPの線維形成が二次的にタウの凝集を引き起こすという仮説を提唱した. (2)NACPとタウが異なった線維を形成することの証明(Acta Neuropathol,in press) 家族性Parkinson病脳においてNACPとタウは同一の神経細胞内に線維性封入体を形成するが,両タンパクはそれぞれ異なった超微形態的特徴をもつ線維に凝集することを免疫電顕により明らかにした.これはNACPがタウと直接結合しないことを示唆するものである. (3)tau遺伝子N279K変異によるParkinsonismを伴う前頭側頭型痴呆例ではNACP線維の異常は見られないことを明らかにした(Neurology,in press)
|