研究概要 |
99年度にX染色体連鎖性鉄芽球性貧血(XLSA)2症例の遺伝子解析を行い,それぞれ新たな赤血球型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)の変異を同定した.第一例ではALAS-E遺伝子の第5エクソンに塩基変異が認められ,この変異によりS568Gのアミノ酸置換がもたらされることが明らかとなった.この変異を有するALAS-E蛋白を大腸菌内にて発現させ,その酵素活性を測定したところ,正常の19.5%に低下しており同定された変異がXLSA発症の責任変異と考えられた.この実験系にALAS-Eの補酵素であるVitB6を添加したところ,酵素活性が正常の31.6%まで回復した.本例は臨床上VitB6の投与が行われていないが,この結果からはその有用性が予想された.第2例ではALAS-E遺伝子の第5エクソンに塩基変異が認められ,この変異によりR204Qのアミノ酸置換がもたらされることが明らかとなった.1例目と同様にこの変異を有するALAS-E蛋白を大腸菌内にて発現させ,その酵素活性を測定したところ,正常の15.1%に低下していた.同様にALAS-Eの補酵素であるVitB6を添加したところ,酵素活性は正常の34.5%まで回復した.本例は臨床上VitB6が有効でありこの実験結果はこれを支持するものであった.遺伝性について検討したところ,第1例では母親は患者が有する変異のヘテロ接合体であることが確認されたが,第2例では家族内での変異が確認されなかった.但し本例では他の体細胞(頬粘膜)でも同じ変異が認められているため,今後本例を発端として変異が遺伝する可能性が示唆された.
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