造血器腫瘍の遺伝子異常を標的にしたアンチセンス療法の開発

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670983
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 前川 平 東京大学, 医科学研究所, 講師 (80229286)
• キーワード: アンチセンス / アポトーシス / 赤白血病

研究概要

キメラ型アンチセンス・オリゴヌクレオチド(AS ODN)を用いて血液細胞、白血病細胞の分化・増殖機序を検討し、以下の諸点を明らかにした。
(1)5'端および3'端の両端から3塩基間の2つの化学結合をホスホロチオエート型結合とし、中央部をホスホジエステル型としたキメラ型分子が、全塩基間がホスホロチオエート型結合の分子と同様、ヌクレアーゼによる分解に耐性であり、非特異的作用や非アンチセンス作用を示す程度が少ないこと。
(2)キメラ型骨格をもったエリスロポイエチン・レセプター(EPOR)に対するAS ODNが有効なアンチセンス機能を有していること。とくに、EPORに対するAS ODNをもちいて、赤芽球系前駆細胞自身がEPOを自己産生すること、赤白血病の増殖に関してもEPOのオートクライン産生が関与し、EPOR AS ODNによりアポトーシスに誘導されること。
(3)トロンボポエチン(TPO)・レセプターに対するキメラ型AS ODNをもちいて巨核球系前駆細胞においてTPOが自己産生されること。
すべての分子間結合がホスホロチオエート型であるアンチセンス核酸分子を用いた実験系では、分子自体が非特異的に蛋白質と結合したり、Bリンパ球を非特異的に刺激するなどの非特異的作用を示し、観察された細胞生物学的な現象が真にアンチセンス作用によるものか、アプタマー効果などの非アンチセンス作用によるものか慎重に検討する必要があった。今回、われわれが検討したキメラ型アンチセンス核酸分子はこれらの非特異的な作用が少なく、ヌクレアーゼによる分解にも耐性で、有効でかつ塩基配列特異的なアンチセンス核酸分子として機能することを示すことができた。このキメラ型分子をもちいてEPOレセプターに対するAS ODNをもちいて赤芽球系細胞自身がEPOを自己産生することなどが分かった。

研究成果

• [文献書誌] Maekawa,T. et al.: "Chemokinel/receptor dynamics in the regulation of hemotopoiesis"Internal Medicine. 39. 90-100 (2000)
• [文献書誌] Macida,U. et al.: "the effect of granulocyte colony-stimulating factor administration in healthy donor"Brit J Haematol. 108. 747-753 (2000)
• [文献書誌] Hase,H. et al.: "TCR-Vβ repertoire analysis with RT-PCR was useful for the early detection of…"Am.J.Hematol. 64(2). 124-127 (2000)
• [文献書誌] Sato,T. et al.: "Erythroid progenitors afferentiate and maturate in responce to endogenous erythropoietin"J.Clin.Invest.. 106. 263-270 (2000)
• [文献書誌] Sasaki,S. et al.: "Growth inhibition of a Burkitt cell line by β-cell specific transcription factor"Oncogene. 19(33). 3739-3749 (2000)
• [文献書誌] Matsui,T. et al: "Glycoprotein 130 and ckit signals synergistically induce thrombopoietin…"Int.J.Hemetol. 72. 455-462 (2000)
• [文献書誌] 前川平: "臨床遺伝子医学ガイダンス(アンチセンス法の原理と応用)"南山堂(小澤敬也編). 312 (2000)
• [文献書誌] 前川平: "アンチセンス法の原理,実験方法と臨床応用.-臨床血液実験操作法"科学評論社(高久史麿,溝口秀昭他編). 628 (2000)