研究概要 |
自己免疫性再生不良性貧血の自己抗原の一つを同定するため,11個のアミノ酸からなるすべての組み合わせ(20^<11>個)のランダムペプチドライブラリーを用いて、シクロスポリン依存性の再生不良性貧血患者骨髄から単離したCD4陽性T細胞のクローンのエピトープの同定を試みた。いくつかのポジションについては,ZN1の強い増殖を引き起こすアミノ酸が同定されたが,そのアミノ酸を含む合成ペプチドを用いても,T細胞の強い増殖を誘導することはできなかった。このため,現在CLIP置換ペプチドライブラリーを利用したエピトープの同定を準備中である。一方,このような抗原に対するT細胞の反応とは別に,患者の体内ではB細胞による反応(抗体の産生)も起こっていることが予想される。そこで,病極期の患者の血清中に,造血細胞由来の蛋白に対する抗体が存在する否かを明らかにするため,寛解期に患者から採取した骨髄細胞からcDNAライブラリーを作成し,発現ベクターを用いて大腸菌に蛋白を発現させた。ニトロセルロース膜に移した蛋白を,病極期の患者血清と反応させ,アルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgGで発色させた。このようなserological identification of antigens by recombinant expression cloning(SEREX)法により150万個のcDNAクローンをスクリーニングしたところ,2個のクローンが同定された。塩基配列を決定したところ,一つはヒトのαグロビンと100%のホモロジーを示し,他の一つはribosomal protein s12と96%のホモロジーを示した。αグロビンは成熟した赤血球や赤芽球に加えて,エリスロポエチン反応性の造血前駆細胞も発現していることが知られている。リコンビナントのαグロビン蛋白に対する抗体の有無を他の患者について検索することにより,この蛋白に対する免疫反応が造血障害の発症に関与している否かを現在検討中である。
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