研究概要 |
自己免疫性再生不良性貧血における自己抗原を同定するため,患者骨髄から単離したCD4陽性T細胞クローンZNIとcombinatoryなランダムペプチドライブラリーを用いて標的ペプチドの同定を試みたが,血液細胞に関連の深い分子の同定には至らなかった.CD4陽性T細胞のエピトープを同定する新たな方法として,CLIP置換型ペプチドライブラリーが開発されたので,現在これを用いてZNIの標的ペプチドを検討中である.このプロジェクトに関連して,細胞傷害性T細胞による造血幹細胞への攻撃が,in vivoにおいて起こっていることを証明するために,再生不良性貧血患者の骨髄から単離した細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocytes.CTL)クローンNT4.2を用いて,EBウイルスで形質転換した自己B細胞に対する細胞障害活性のメカニズムを検討した.その結果,細胞傷害活性が起こるためには,CD58やCD59などのglycosylphosphatidylinositol(GPI)アンカー膜蛋白を標的細胞が発現している必要があることが示された.再生不良性貧血の発症に造血幹細胞に対するCTLが関与しているとすれば,このようなGPIアンカー膜蛋白を欠失しているparoxysmal nocturnal hemoglobinureia (PNH)形質の幹細胞はCTLの攻撃を免れて生き残る可能性がある.そこで,100人の再生不良性貧血患者末梢血について,CD55・CD59を欠失している顆粒球の有無を高感度のフローサイトメトリーを用いて検討したところ,発症後間もない再生不良性貧血患者の88.6%にこのようなPNH顆粒球の増加が認められた.このPNH顆粒球の割合は,免疫抑制療法後の血液学的回復にともなってほとんどの例で著明に減少した.したがって,多くの再生不良性貧血患者では造血不全の発症にCTLが関与していると推察された.
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