研究概要 |
我々はallelotype studyによって悪性リンパ腫で染色体1番長腕、3番短腕、6番短腕および6番短腕に高頻度の欠失領域が存在する事を見出した。6pについては詳細な欠失地図を作成し、2ヶ所の共通欠失領域を同定した。すなわちD6S1721およびD6S260の間(6p23-24)、およびD6S265とD6S291の間(6p21)である。つぎに1qにおける新規癌抑制遺伝子の探索を開始した。ホメオボックス遺伝子PROX1は1q32に存在し、これは我々が見いだした染色体1番長腕の共通欠失領域に相当する。 RT-PCR法による解析では検討した29種類の造血系細胞株では一部の細胞株で著しい発現の低下を認めた。一方正常の造血組織では全組織で発現が認められた。 RT-PCRにてPROX1の発現が認められなかったRaji細胞を5-aza-2'-deoxycytidineで処理したところその発現が回復し、発現低下にDNAメチル化が関与することが示唆された。 造血器腫瘍由来細胞株11種類、非特異的リンパ節炎2例、健康人の末梢血単核球3症例、正常脾臓細胞の計17種類のDNAを用いintron 1のDNAメチル化をbisulfite mapping法で検討したところ、DNAメチル化の亢進は造血器腫瘍由来細胞株のみに認められ、発現とメチル化に強い相関を認めた。PROX1遺伝子変異についてPCR-SSCP法および塩基配列決定方にて解析したところ、5種類の細胞株(BALL1,HEL,THP6,RPMI8402,Jurkat)にてmissenseおよびnonsense mutationを認めた。 以上からいくつもの造血器系の細胞株でPROX1遺伝子がおもにDNAメチル化によって不活化されていることが明らかとなった。これらの結果よりPROX1は造血器腫瘍に関連する癌抑制遺伝子の候補になりうると考えられたため、現在その機能について細胞増殖などへの関与などを検討中である。
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