白血病細胞株NB-4を用いてレチノイン酸(ATRA)による顆粒球系細胞分化に伴うミオシンIIAおよびIIB、ミオシンホスファターゼ、Rho-キナーゼの変動をそれぞれの特異抗体を用いてWestern blot法により検討した。HL-60細胞同様ミオシンIIA及びIIBはともにNB-4細胞に発現しているが、IIAの発現がより豊富に存在していた。ミオシンIIAの発現は顆粒球系分化誘導に伴い増加したがミオシンIIBの発現は殆んど変化しなかった。ミオシンホスファターゼ酵素はPP1δ触媒サブユニット、ミオシン結合サブユニット(MBS)と20Kサブユニット(M20)より成っていることが平滑筋や血小板で報告されているが、NB-4細胞にはPP1δおよびMBSは存在していた。ATRAによる分化誘導によるMBSの発現変動は殆んど認められなかった。一方、Rho-キナーゼは漸増する傾向が認められた。ATRAによるNB-4細胞の分化誘導に伴うミオシンIIやアクチンの局在の変化を核の形態変化と関係づけながら共焦点レーザー顕微鏡を用いて検討した。線維芽細胞ではアクチンはストレスファイバーとして認められるが、HL-60細胞同様NB-4細胞ではストレスファイバーは観察されなかった。NB-4細胞ではアクチンやミオシンIIAは核近傍に局在する傾向が明らかとなった。また、ATRAで顆粒球系細胞に分化誘導すると、アクチンやミオシンIIAは細胞辺縁部と分葉核の橋部に高密度に分布することが確認された。さらに、顆粒球系分化誘導に伴うリン酸化(Ser19)ミオシン軽鎖MLC_<20>の分布も分葉核の橋部に局在化する傾向が認められた。以上のことから、ATRAによるNB-4細胞の顆粒球系分化誘導に伴う核分葉化過程にもアクチン系モーター蛋白ミオシンIIAが関与している可能性が示唆された。
|