本研究では、レトロウイルス・ベクターを用いた実用可能な新たな手法を開発し、マウスのストローマ細胞株を用いて、ヒトの幼若な造血細胞をin vitroで増幅すると共に、遺伝子を導入することを試みた。 マウスのストローマ細胞株とヒト臍帯血由来の造血幹細胞との共培養の系を用いて以下の結果を得た。 1。ストローマ細胞株とヒト臍帯血由来の造血幹細胞との共培養の系にヒト造血因子を添加することで、CD34+/38-のマーカーを持つ細胞を数百倍以上増幅し得た。 2。この培養系で、ヒトLTC-ICの増幅が可能であった。 3。増幅された、CD34+/38-のマーカーを持つ細胞は、NOD/SCIDマウスにおいて、ヒトの造血を再構築した。 この共培養系を用いて、レトロウイルスベクターによる遺伝子導入を試みた。 1。ヒト臍帯血由来CD34+/38-細胞の約15%にマーカー遺伝子の発現を確認した。 2。フレンド白血病ウイルス(SFFV)のLTRとMurine ES Cell Virus(MESV)ベクターのleaderの基本構造を持つベクター(FMEVタイプ)は、モロニー白血病ウイルス(MoMLV)を基本骨格としたベクターに比べて、造血幹細胞(CD34+/38-)での遺伝子発現が高かった。 3。ヒトLTC-IC(long-term culture initiating cell)への遺伝子導入・発現が確認された。 4。遺伝子導入された細胞は、NOD/SCIDマウスにおいてヒトの造血を再構築した。
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