研究概要 |
1、B細胞リンパ腫(B-NHL)に高頻度に認められるBCL6転座は、免疫グロブリン遺伝子(IG)ばかりでなく、IG以外の多様な領域(non-IG)を転座のパートナーとする。我々はB-NHL58例のBCL6転座の転座接合部をlong-distance PCRおよびlong-distance inverse PCRを用いてクローニングした。その結果、30例がIG(IGH,22例;IGLK,1例;IGLλ,7例)、23例がnon-IGをパートナーとしていた。Non-IGパートナーのうち既知の遺伝子はH4 histone,TTF,transferrin receptor gene,HSP89α,HSP90β,PIM-1,α-NAC,CIITAであった。転座の結果、BCL6のプロモーター領域が、パートナーのそれに置き換わることが明らかになった。Non-IGパートナーは細胞周期やサイトカインによって活性化される遺伝子であるので、転座によってもたらされるBCL6の脱制御のメカニズムは、単なる過剰発現ではないことが示唆された。一方、BCL6上の切断点は第一エクソンの下流に集中しており、特に集中の顕著なhyper-cluster regionを見いだした。さらに、gel-shift assayによってhyper-clusterに結合する蛋白が存在する可能性を示唆した。 2、t(8;14)転座は、バーキットリンパ腫(BL)ばかりでなく大細胞型リンパ腫(DLBCL)の一部にも認められる。我々は、t(8;14)に伴うc-MYCとIGHの結合を検出するlong-distance PCRを考案し、203症例のDLBCLを解析した。その結果12例がPCR陽性であった。これらの12例の年齢中央値は65.5才であるが、臨床病態やc-MYC/IGH結合部の構造はBLと同様であった。
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