研究概要 |
BCL6転座の新たなパートナー遺伝子のクローニング BCL6転座は免疫グロブリン遺伝子(Ig)だけでなく多様なnon-Ig遺伝子をパートナーとする。我々は昨年度までに9種類のnon-Igパートナー(TTF,H4 histone,HSP89α,HSP90β,CIITA,PIM-1,TFRR,Ikaros,α-NAC)を報告した。今年度はt(3;16)(q27;p11)の転座接合部の解析を行いinterleukin-21 receptor(IL-21R)遺伝子がパートナーであることを明らかにした。IL-21R遺伝子は8個のcoding exon(exons 2-9)と2個のnon-coding exon(exons 1a,1b)からなり、t(3;16)転座は約27kbのintron 1で生じる。t(3;16)の結果IL-21Rのプロモーター領域がBCL6のそれと入れ替わる。t(3;16)を有するリンパ腫細胞株YMでは、IL-21R exon 1a1b/BCL6とIL-21R exon 1a/BCL6の2種類のfusion mRNAが認められる。YM細胞におけるIL-21Rの発現レベルは他のリンパ腫細胞よりも高いことから、BCL6の発現がIL-21Rのプロモーターによって高いレベルに調節されていると考えられる。 Ig/BCL6リンパ腫とnon-Ig/BCL6リンパ腫の臨床病態 BCL6の多様なパートナー遺伝子がリンパ腫の臨床病態に影響するかどうかを検討した。BCL6の再構成を伴う39症例のB細胞性大細胞型リンパ腫のパートナー遺伝子を解析した結果、21例がIg、17例がnon-Ig遺伝子であった。両群のoverall survivalを比較したところnon-Ig/BCL6群がIg/BCL6群に比して有意に不良であった(P=0.0440)。
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