研究概要 |
1.我々はこれまで、染色体に組み込まれたヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)DNAが世代間を遺伝し、子孫に受け継がれうることを提唱してきた(Lancet352:543,1998;Blood94:1545,1999)。しかし、これらは主にリンパ球などの血液細胞におけるデータ解析によるものであった。そこで明らかな結論を得るために、本年度は体細胞での解析をおこなった。これまでの解析で遺伝的なHHV-6の組み込みがあると考えられているドナーの皮膚生検材料から線維芽細胞を分離培養した。FISHでHHV-6の存在を検討したところ、HHV-6は血液細胞と全く同じ染色体部位に組み込まれていることが判明し、HHV-6は遺伝的伝播を受けることが強く示唆された。(Blood95:1108,2000) 2.MALTリンパ腫は節外性のmarginal zone B-cell lymphomaとして定義されているが、多くの症例でHelicobacter pylori関連胃炎や、シェーグレン症候群・橋本病などの自己免疫疾患といった慢性炎症を先行病変とすることが多い。早期の段階では局所にとどまり、予後良好で炎症と腫瘍の境界病変とも考えられている。そこで本年度は眼付属器領域のMALTリンパ腫に的をしぼり、ヘルペス群ウイルスとの関係を調べた。12例の眼窩原発、2例の涙腺原発MALTリンパ腫(男性8例、女性6例、33-71歳で平均年齢56歳)について、Epstein-Barr virus(EBV)、HHV-6、HHV-7、HHV-8をPCR、in situ hybridizationで検索した。EBVは4例で、HHV-6は4例の症例で検出されたが、うちEBV、HHV-6の双方が検出されたのは2例でいずれも涙腺原発のMALTリンパ腫であった。HHV-7、HHV-8は検出されなかった。眼付属器領域のMALTリンパ腫の一部の症例にHHV-6、EBV感染が関与している可能性が示唆された。(Leukemia Lymphoma37:361,2000)
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