研究概要 |
1.前年度に引き続き、血液造血器腫瘍におけるヒトヘルペスウイルス感染の有無を検索した。また血液造血器腫瘍患者に合併する病態についてもこれらウイルスの関連を調べた。我々は以前、血液造血器腫瘍患者の化学療法後における免疫抑制状態において、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が再活性化し、重篤な病態を引き起こすことを報告した(Leukemia 11:882-895,1997)。今回我々はHIV陰性悪性リンパ腫患者に発生した進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy : PML)の病変部にHHV-6の感染を確認した(Am.J.Hematol.67:200-205,2001)。PMLはその多くがHIV陽性患者に発生すると言われているが、血液造血器腫瘍患者に発生したPMLにHHV-6が関与する可能性を示唆する重要な所見であった。 2.我々はこれまで、染色体に組み込まれたHHV-6 DNAが世代間を遺伝し、子孫に受け継がれうることを提唱してきた(Lancet 352:543,1998;Blood 94:1545,1999)。遺伝的伝播を受けたHHV-6が胎児にどのような影響を与えるのか否かは不明である。過去に奇形などのために流産した胎児につきHHV-6感染の有無を剖検例を中心にretrospectiveに検索した。我々が調べた数例ではHHV-6は検出されず、その結論には大規模な検索が必要であると考えられた。 3.ウイルスと骨髄腫との関連を検索していた過程で、血清乳酸脱水素酵素(LDH)が異常に高値を示す骨髄腫を見い出した。さらに細胞株の樹立に成功し、骨髄腫細胞がLDHを過剰に産生・放出することを証明した。このような骨髄腫は悪性度か高く、予後不良であることが示唆された(Am.J.Hematol.66:267-273,2001)。
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