血漿蛋白であるプロテインCの欠損は血栓症の一因となっており、プロテインCのノックアウトマウスは生後24時間以内に重篤な血栓症によって全て死亡する。従って、プロテインCは血液凝固制御にとって必須の分子である。プロテインCはセリンプロテアーゼ前駆体として循環しているが、この状態では生理活性を発揮できない。血液凝固系の作動によって生成されたトロンビンによって血管内皮上で活性化のプロテアーゼに変換されて、はじめて抗凝固因子として機能するようになる。プロテインCの活性化に寄与する血管内皮上の分子としては、トロンビンを特異的に結合するトロンボモジュリン(TM)と血管内皮プロテインCレセプター(EPCR)が同定されている。TMとEPCRのノックアウトマウスはともに胎児早期に死亡してしまうために、血栓症との関連について機能することは不可能であった。そこで、これらの受容体およびプロテインCに対する機能阻止抗体を調製し、投与実験を行うことで、これらの分子が凝固制御において果たしている機能の解析を行った。まず、プロテインCに対する抗体でEPCRに対する結合を特異的に阻止する抗体を作成し、マウスに投与したところ致死的な血栓が誘導された。この抗体は活性化プロテインCの抗凝固活性には影響を与えないので、プロテインCとEPCRの結合がin vivoの凝固制御にとって必須であることが示唆された。EPCRに対する機能阻止抗体でも重篤な血栓症が誘導されたのでEPCRの機能も凝固制御に必要である。マウスTMに対する機能阻止抗体の作成にも成功し、この抗体によって重篤な血栓症の誘導が起こることも明らかになった。プロテインC経路において主要な役割を果たす、これら全てのマウス分子に対して機能阻止抗体が作成できたので、今後詳細なin vivoでの機能解析が可能になった。
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