我々は造血を支持する骨髄間質細胞と造血作用がないと考えられる皮膚の線維芽細胞のcDNAlibraryからサブトラクションライブラリーを作製した。このライブラリーよりinsertが1.5kbを越えるものを100クローンシークエンスし未知の遺伝子に限り骨髄間質細胞と皮膚の線維芽細胞のtotal RNAを用いてノーザンブロットを行った。その結果1クローンのみが骨髄間質細胞のみに高い発現を示した。皮膚線維芽細胞においては、全く発現は見られず、しかもこの遺伝子のmRNAのサイズは非常に大きいものでノーザンブロットの結果からみると8-9kb程度あると考えられた。この遺伝子は血球系の末梢血リンパ球には発現しているが単球マクロファージ系の細胞には全く発現していなかった。さらに各種の血球系の細胞株においてこの遺伝子の発現をノーザンブロットを用いて行い高い発現を認めた。またこの遺伝子の全長のcDNAを得るために骨髄間質細胞cDNAライブラリーを用いてコロニーハイブリダイゼーションを行ったが、もっとも長いもので2kbのものを得ただけであり、さらにベクタニの配列を用いてlongPCRを行ったが5'端の塩基配列を得ることができなかった。しかし、最近Human Genome Projectの進行に伴いほぼHuman Genomeの全配列が明らかとなった。そこでこの遺伝子配列をGenBankのBlastにかけることによりこの遺伝子が12番染色体の上に乗っていることが明らかとなった。今後は血球系の各lineageでの発現をみることが必要であり、この遺伝子を発現している細胞は増殖能を有している血球系の細胞であると思われる。そして骨髄間質細胞とhomomericな相互作用をして造血の維持に関わっている可能性が考えられる。いずれにしてもアミノ酸をコードしている部分の配列がまだ得られておらず、今後はランダムプライマーを用いたcDNAライブラリーでスクリーニングを行う一方、Human Genome Projectで得られた配列が、ランダムな配列の集合体としてのみ公開されているため、この配列の順序がわかり次第、特殊なソフトウェアを用いてcoding sequenceをgenomic sequenceから抜き出すことを考えている。
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