1.成人T細胞白血病(ATL)の進展におけるメチル化の関与:sodium bisulfiteで処理した染色体DNAを用いたPCR法にてp16遺伝子(プロモーターからエクソン1まで)のメチル化を検出した。メチル化はATL症例で高頻度(75%)に検出されると共に癌抑制遺伝子であるp16のメチル化がATLの進展とともに増加することを明らかにした。メチル化はエクソン部分にまず検出され、病期の進展と共にプロモーター部分に認められた。プロモーターにメチル化の認められる症例ではp16遺伝子の転写抑制が認められると共に脱メチルを起こす5-aza-deoxy-cytidine処理によりp16遺伝子転写産物の増加を認めることからプロモーター部分のメチル化がp16遺伝子の転写抑制に関与していることが証明され、メチル化がp16遺伝子の転写抑制、腫瘍の進展に関連していることが示された。 2.同一個体内におけるメチル化のvariation:同一患者中で末梢血とリンパ節で全くメチル化のパターンが異なる症例が存在した。これはメチル化の違いが細胞の組織親和性とも関連している可能性を示している。また末梢血中のATL細胞p16遺伝子のメチル化を同一個体内で解析するとメチル化の起こっているalleleにメチル化が蓄積する傾向が認められ、growth advantageを持つ細胞が生体内で選択されており、この過程にメチル化が関与するということを示している。
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