SKY法は、染色体ペインティングプローブを用いている性質上、異なる染色体間の転座の検出には威力を発揮するが、同一の染色体内で起こる逆位や重複といった構造異常は、色調が変化せず検出することができない。また、転座染色体の由来は染色体単位では同定できても、バンド単位では決定できない。これらの限界を克服し、より精度の高い染色体解析を可能にするためには、染色体がG分染像と一致したバンド単位で、しかもおのおの異なる色調で識別・検出できる方法(われわれは、multicolor-banding法と名付けた)が最も理想的である。 microdissection法を用いれば、顕微鏡下で分裂中期染色体の特定のGバンドと一致した染色体領域を切り出し、ゲノムDNAを抽出・精製することが可能である。11番染色体に関しては、400バンドレベルの解像度において観察される13バンドのうち10バンドについて、バンド特異的なゲノムDNAが得られていた。このゲノムDNAをテンプレートにしたDOP-PCR増幅産物を波長域の異なる4種類の蛍光色素のいずれかを用いて異なる組み合わせで標識した。この10バンドのプローブを混合し、ヒト正常分裂中期染色体に対してハイブリダイズさせSKY法の原理にもとづいて解析した。その結果、10バンドともある程度、11番染色体のGバンドパターンに対応して、それぞれが異なった色調で検出されるカラー分染像を得ることができた。 次年度は、他の染色体についてもmulticolor-banding法を実用化し、さらに、造血器腫瘍の臨床検体の染色体標本に適用し、実際の染色体診断に有用であるかを検討していく予定である。
|