研究概要 |
骨髄異形成症候群(以下MDS)におけるビタミンK2(以下VK2)の臨床応用を目的として,以下の基礎的検討を行い,その成果を発表した。 ヒト白血病細胞株HL-60にbcl-2geneを導入し,BCL-2過剰発現株HL-60bcl2を作成した。このHL-60bcl-2とコントロールベクターのみを導入したHL-60neoにおけるVK2の反応性を比較検討した。 in vitroではHL-60neoではVK2の濃度依存性に効率良くアポトーシスを誘導するのに対して,HL-60bcl-2ではほぼ完全にアポトーシス誘導がブロックされた。また,HL-60bcl-2では,ミトコンドリア膜の脱分極は有意に抑制され,かつ,caspase-3の活性化も抑えられた。しかし,VK2はHL-60bcl-2に対して,細胞増殖曲線上は抑制的に作用することから,cytostaticな作用が示唆された。flow cytometryを用いた細胞周期解析を行うと,VK2処理によりHL-60bcl-2のG1 arrestが誘導されることが明らかとなり,また,その際にはCDK inhibitorの一つであるp27^<KIP-1>の発現増強が観察され,同時に単球系への分化が誘導された。 以上よりVK2は,白血病細胞に対してアポトーシス誘導と分化誘導の両効果を発現することが示唆された。 一方,実際の臨床研究では,既にVK2の投与を行ったMDS症例およびMDSから発症したAML症例(post-MDS AML)を対象に,その有効性に関する全国アンケート調査を行った。その結果,計47例が評価可能対象例として回答され,MDSのrefractory anemia(RA)症例の約20%でcytopeniaの改善効果を,RA with excess of blasts in transformation(RAEB-T)症例の約70%,および,post-MDS AMLの50%に芽球の減少効果が報告された。また,全例にVK2投与による副作用は認められなかった。これより,さらに客観性の高い効果判定を目的とするVK2療法のprospective trailの検討が進められている。
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