研究概要 |
今年度の研究計画は概ね達成されたと考える。 基礎的検討としては,白血病細胞株HL-60に遺伝子導入によりBCL-2を過剰発現させたHL-60bcl-2細胞では,ビタミンK2によるアポトーシス誘導に対して耐性を獲得した。しかし,細胞周期解析においてはG1 arrestが誘導され,かつ,単球系への分化が誘導された。これより,ビタミンK2は白血病細胞のアポトーシスを誘導するのみならず,アポトーシス耐性クローンに対しては,Glarrestを介して分化誘導効果をも発現することが示唆された。同様な現象は,白血病患者由来の白血病細胞の初代培養系においても再現された。次に,我々はこのビタミンK2による分化誘導効果を踏まえ,同じ脂溶性ビタミンであるビタミンD3ならびにその誘導体のoxacarcitriolとの併用効果について検討した。興味深いことに,VK2とVD3との同時併用により白血病細胞株の分化誘導が相乗的に極めて強力に誘導されることが判明した。また,それと同時に細胞のGlarrestが,VK2あるいはVD3単独に比較して増強していた。現在,この現象について,さらに転写因子の相互作用の観点から検討中である。 臨床面での検討では,全国の主要施設に骨髄異形成症候群(MDS)におけるVK2療法のpilot studyの結果のアンケート調査を実施した。驚くべきことにMDS症例の中のRAEB-Tでは70%の症例に,また,MDSから発症した2次性白血病においては約50%の症例でVK2の有用性が報告され,かつ,調査対象全例に副作用は全く認められなかった。VK2は芽球比率を現象させるだけでなく,MDSの不応性貧血患者のcytopeniaに対しては改善効果も観察された。この効果がVK2の分化誘導効果で説明できるか否か検討中である。さらにMDSを対象とするVK2療法のprospective randomized trialに向けて準備を進めている。
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