研究概要 |
我々はビタミンK2(以下VK2)が白血病細胞のアポトーシスを誘導することを独自に報告した。このアポトーシス誘導に際して,BCL-2の低下,BAXの増強,ミトコンドリア膜電位の低下ならびにcaspase-3の活性化が誘導される。一方,BCL-2を遺伝子導入により強制過剰発現させたHL-60bcl-2においては,VK2処理によりアポトーシス誘導はほぼ完全にブロックされたが,Glarrestは誘導され,かつ,単球系への分化が誘導された。これよりVK2はアポトーシス耐性クローンに対してはGlarrestを介して分化誘導効果をも発現することが示唆された。さらに,VK2とビタミンD3誘導体とを併用すると,HL-60のGlarrestはさらに増強し,かつ,単球系への分化誘導能が相乗的に増強した。また,この単球系への分化に連動して,VK2によるアポトーシス誘導は抑制された。よって,単球系への強制的分化誘導は,VK2によるアポトーシス誘導と拮抗することが示唆された。 我々に基礎的データに呼応して,骨髄異形成症候群(MDS)におけるpilot testが全国の各施設で実施された。これら治療成績のアンケート調査を実施・集計したところ,RAEB-T,post-MDS AMLの約50%以上の症例で,VK2の投与により芽球の減少が,また,不応性貧血(RA)の約20%で血球減少の改善が報告された。MDSのRAは骨髄内でのアポトーシスを介した無効造血によるものと考えられている。これよりVK2による芽球のアポトーシスならびに分化誘導を介したアポトーシス耐性化という,一見相反する現象が,上記のMDSの治療成績を反映していると考えられる。 これら現象についての分子機構に関する検討は現在も進行中である。
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