白血病発症の分子生物学的解析をテーマに研究した。特に慢性骨髄性白血病(CML)の発症およびCML臨床血液像の違いを分子生物学的手法により細胞レベルで解析・解明することを目的とした。主たる解析遺伝子は白血病細胞のc-kitおよびR3-2遺伝子である。 CML80症例(慢性期48症例、移行・急性期32例)にてc-kit遺伝子細胞膜直下領域をPCR-SSCP法および、塩基配列決定法にて突然変異を解析した。CML慢性期7症例で遺伝子変異が観察された。このうち6症例はcodon541 ATG(Met)→CTG(Leu)を1症例はcodon564 AAT(Asn)→AAG(Lys)の遺伝子変異が観察された。これらの変異例では白血球増多が高度の傾向が認められ、急性期パターンも非典型的であった。このc-kit遺伝子に突然変異が生理学的に白血病を発症してくるのかin vitroおよびマウスにて検討したところ、マウスには腫瘍を形成しなかった。in vitro Baf3細胞増殖能はcodon564 AAT(Asn)→AAG(Lys)c-kitを発現させるとwild c-kitに比べ増殖能が亢進したが、完全なるIL3自立増殖能ほどではなかった。codon541はwild c-kitに比べほとんど同じ増殖能であり、ポリモルフィズムの可能性が考えられた。c-kit変異はCML発症に関わる症例があるものの、頻度は低率であり、病型に影響を与えている可能性が考えられた。R3-2遺伝子はcalpastatin類似遺伝子でありCML急性期で高発現されている症例が多く、一部の症例で分子量が変化していた。なお、CML症例でp51/p63遺伝子変異が観察され現在検討中である。
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