研究概要 |
N-グリカン阻害剤であるN-butyl deoxynojirimycin(NB-DNJ)は、哺乳類細胞においてhigh mannose型糖蛋白を蓄積させる。昨年度の研究でヒト骨髄の好中球成熟過程におけるN-グリカン阻害剤は好中球の成熟を遅延させることを報告した(BBRC269:219-225,2000)。一方、ヒト骨髄性白血病細胞(HL-60)はATRA刺激によって好中球に分化することが知られている。このATRA刺激HL-60は、G-CSFによって更に分化が促進されるが、その分化誘導がN-グリカン阻害剤であるNB-DNJによってどのような影響を受けるかを調べた。HL-60のin vitro培養系でNB-DNJはG-CSFによる分化誘導促進作用を抑制することが示された。さらに、HL-60のG-CSF Recepter(G-CSFR)mRNAの発現をRT-PCRで検討したところ、ATRA刺激ではG-CSFR mRNAの発現が増強されるのに対し、NB-DNJ存在下ではATRAによるG-CSFR mRNAの発現が著明に抑制された。以上のことより、NB-DNJの分化誘導抑制作用は、G-CSFR mRNAの発現を抑制していることに起因していることが示唆された。今後、更に、G-CSF Recepter遺伝子のpromotor活性が、NB-DNJによってどのように調節を受けるかを検討し、NB-DNJの好中球成熟抑制作用について機序を明らかにする予定である。
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