N-グリカン阻害剤であるN-butyl deoxynojirimycin (NB-DNJ)は、哺乳類細胞においてhigh mannose型糖蛋白を蓄積させる。昨年までの研究でヒト骨髄の好中球成熟過程におけるN-グリカン阻害剤は好中球の成熟を遅延させることを報告した。一方、ヒト骨髄性白血病細胞(NB4)はATRA(all trans retinoic acid)刺激によって好中球に分化するため、このin vitroの細胞株モデルを用いてNB-DNJの顆粒球分化成熟に対する影響を検討した。分化成熟の指標として、NBT還元試験、G-CSF receptor (G-CSFR) mRNAおよびC/EBPε mRNAの発現を用いた。ATRAはNB4細胞を分葉核球へと分化させるとともに、各分化指標もup-regulationしたが、NB-DNJの同時存在下では、NB4細胞は形態学的に骨髄球までしか成熟できず、NBT還元能の低下、C/EBPε mRNAの発現の抑制が観察された。一方、G-CSFR mRNAの発現はかえって増強した。以上のことから、NB-DNJは顆粒球の分化成熟の最終段階で、抑制的に作用することが示唆された。
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