研究概要 |
アスパラギン結合型糖鎖の阻害剤であるswainsonine及びN-buty1 deoxynojirimycin (NB-DNJ)は、哺乳類細胞においてそれぞれ不完全糖鎖であるhybrid型、high mannose 型糖蛋白を蓄積させる。好中球成熟過程における不完全糖鎖の影響を調べるために、ヒト非付着性骨髄単核細胞をG-CSFの存在下、非存在下それらの糖鎖合成阻害剤とともに培養した。G-CSF単独では骨髄好中球系細胞の増殖と成熟が同時に刺激されたが、糖鎖合成阻害剤の添加により成熟好中球数の数は減少し、成熟が抑制されることが観察された。アポトーシスの検討から、この成熟好中球数の減少はSwainsonineの場合には、細胞障害によるものではなく成熟抑制が主体であり、NB-DNJの場合には細胞障害と成熟抑制の両方の原因が考えられた。さらに好中球分化モデルであるall tans retinoic acid(ATRA)刺激ヒト骨髄性白血病細胞株(HL-60)を用いて,NB-DNJの影響を調べた。NB-DNJはHL-60の分化を抑制するとともに、G-CSF受容体mRNAの発現をも著明に抑制し、NB-DNJによる好中球分化誘導抑制作用は、G-CSF受容体mRNAの発現の抑制に起因していることが示唆された。本研究により、アスパラギン結合型糖鎖合成阻害剤は好中球の最終成熟を抑制することが明らかになった。
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