研究概要 |
免疫抑制剤ミゾリビンに結合する蛋白質をブタ腎から精製し、このうち分子シャペロンであるHSP60と14-3-3蛋白についてさらに解析を行った。 1.ミゾリビンとHSP60について (1)ミゾリビンがHSP60に強く結合することをアフィニィティーカラムクロマトグラフィーと表面プラズモン共鳴分析法により示した。 (2)種々のミゾリビンアフィニィティーカラムを用いた分析により、ミゾリビン分子内のNH_2グループの構造がHSP60との結合に関与することを示した。 (3)ミゾリビンがHSP60のシャペロン活性を抑制することを、変性酵素の再修復能を測定する系を用いて示した。 以上、ミゾリビンの標的蛋白としてHSP60を初めて同定した。ミゾリビンの免疫抑制作用機序の一つにHSP60のシャペロン活性の抑制があるものと考えられ、米国生化学分子生物学会誌に発表した。 2.ミゾリビンと14-3-3蛋白について (1)ミゾリビンが14-3-3蛋白と結合して構造を変化させることをアフィニィティーカラムクロマトグラフィーとCDスペクトラムにより示した。 (2)14-3-3蛋白は活性型グルココルチコイドレセプター(GR)に作用し、その転写能を増強させる(Wakui H,et al.,J Biol Chem 272:8153-6,1997)。そこで、ミゾリビンがこの系に及ぼす影響についてGST pull-down法とトランスフェクション法により検討した。その結果、ミゾリビンは14-3-3蛋白のGRへの結合性を高め、GRの転写活性能を増強させることを示した。 以上、ミゾリビンの免疫抑制作用機序の一つとして、分子シャペロン14-3-3蛋白を介するGRの転写活性増強作用があるものと考えられた(投稿中)。
|